学芸員室の雑記帳

過去の倒産情報

製本された「帝国興信所所報」

他部署から史料館宛に、戦後わずかの期間存在した会社について問い合わせがありました。

過去の会社を調べるにあたって、まずは、『帝国データバンク会社年鑑』(年鑑)の前身、『帝国銀行会社要録』(要録)にあたります。所在地(都道府県)と会社名がわかれば探すのはそう難しくはありません。掲載制限があるため、すべての会社が網羅されているわけではありませんが、比較的規模の大きい会社であれば掲載されている可能性は高く、今回も大きな会社であったため、見つけることができました。

こういった問い合わせは時々あります。要録には、会社名の他、所在地、事業目的、設立年月、総株数、株主総数・出資人数、資本金、役員・代表社員の氏名と持株・出資額、大株主氏名・持株数、事業所情報、決算情報などが含まれ、戦後はさらに従業員数、売上高、取引銀行情報が追加されます。ある会社が会社史を作る際、社内に資料が残っていなかったため、当時の売上高を知りたいという依頼もありました。過去の会社概要を知る材料として、要録は比較的活躍頻度の高い資料です。(当館比)

要録の該当箇所の画像を送って程なくして、今度はその会社が会社更生法を開始した時期が判明したので、倒産の詳細を知りたいとの依頼が入ってきました。倒産情報といえば、『帝国ニュース』の前身『帝興情報』がすぐに思い当たりましたが、『帝興情報』は1964年の創刊、残念ながら会社更生法の開始時期はそれよりも前でした。そこで、「帝国タイムス」の前身「帝国興信所所報」(所報)に当たってみたところ、毎号掲載されている「各地信用破綻ニュース」の欄のトップに大きく取り上げられており、詳細な情報を得ることができました。

所報の倒産情報がこれほど役に立つのかということを改めて実感した一件でした。こういった活用事例をもっと社内に発信して、所蔵資料の活用方法を知ってもらいたいとは思いますが、そのためにはまず、史料館員が資料価値を十分に把握していなければならないということを改めて反省しました。

それでもここ最近、社内からの問い合わせや、ご案内の機会がじわじわ増えている気がします。一歩一歩着実に進めていると信じて、コロナにも梅雨にも負けず前向きにがんばっていきたいです。