古文書講座で『町人考見録』を読んでいます。昨日2回目の講座で序文を読み終えました。
講座のテーマが「江戸時代の倒産」なので、三井家が編纂した江戸時代京都の倒産事例集である『町人考見録』を前半のテキストにしています。序文はお手本のようなきれいな字で書かれていて、「前車の覆るを見て、後車のいましめのため」すなわち後世の反面教師にするために倒産事例を書き残したと記されています。
ここで何度も繰り返し出てくる教訓は、三代以上続くことがいかに難しいかということです。商家において、初代は質素倹約に勤め、家業に邁進します。二代目もまだ家が発展途上であったり、幼いうちに貧乏を経験しているためなんとか持ち堪える。しかし、三代目は生まれながらに裕福な環境で育ち、苦労を知らないため、家業のやり方も知らないまま年を重ね、出費や借金も嵩み、家を潰してしまうことはよくあることとしています。
商家に限らず、治世においても古今東西のあらゆる事例を引いて三代続くことの難しさを説いています。例えば源氏三代についても、頼家が鞠に興じ、実朝が和歌に夢中になっていたことを源氏没落の理由に取り上げています。そう単純ではないことは「鎌倉殿の十三人」でも描かれていますが、「三代」というのは一つのターニングポイントのようです。
現在、企業の平均年齢は37.48歳。これを短いとみるか長いとみるか、三代には届くか届かないくらいの長さです。『町人考見録』の序文に書いてあることは、倒産しないため、商家が長く続いていくための、すなわち老舗のための心構えです。奢り高ぶらないこと、もちろんそれだけで続けられるほど単純な話ではありませんが、今も昔も大切なことには変わりありません。
次の展示のテーマは「老舗」です。100年以上続く企業にフォーカスします。