日本には各地に有名な酒所があり、お酒好きの方なら北海道の千歳鶴や新潟県の八海山など、一度は飲まれたことがあるのではないでしょうか。その中には資料館を併設している酒蔵も多くあります。
日本の三大酒所は、京都府の「伏見」、広島県の「西条」、そして兵庫県の「灘」といわれており、特に兵庫県は企業博物館数35館のうち10館は酒造会社が運営しています。酒造会社の企業博物館がある他の都道府県でも、1県あたりの平均は約1.9館。兵庫県は圧倒的な多さです。酒所としての地域性を感じますね。
この灘一帯にある酒造地「西郷」「御影郷」「魚崎郷」「西宮郷」「今津郷」の5つの地域を総称して灘五郷といいます。室町時代から醸造の記録が残るこの場所には、上質な酒米と地下水、気候、そして輸送に欠かせない港などが揃っていたため、日本酒造りに最適な環境のもと名産地として栄えていき、現在では日本の清酒生産量約3割を占めているとのこと。流石は日本酒の一大生産地。日本酒の歴史を語るうえで欠かせない地域です。
しかしそんな灘五郷も、明治の酒造規則や、世界恐慌、戦争や震災、ニーズの多様化など、幾多の困難によって廃業に追い込まれたり、生産量が低迷する時期もありました。それらを乗り越え復興し、酒造りの伝統文化を広め、後世に伝えるために資料館を設置していることに業界の努力と企業博物館のあり方の祖型を感じます。
灘五郷の企業博物館は以下のとおり。
沢の鶴資料館
櫻正宗記念館櫻宴
浜福鶴吟醸工房
菊正宗酒造記念館
白鶴酒造資料館
甲南漬資料館
白鷹禄水苑 白鷹集古館
白鹿記念酒造博物館
酒蔵でしか飲めない生原酒や利き酒を用意した試飲コーナーを設けているところもあるようです。歴史ある酒蔵も文化財として楽しめそうですね。歴史や製法を知ることで、より味わい深く感じられるのではないでしょうか。