先日、免許の更新に試験場まで自転車で行ってきました。最近あまり乗っていなかったため、錆びついたペダルは重く、運動不足の身に上り坂は応えましたが、照葉の中を疾走し、いい汗をかきました。クロスバイクデビューしたいと思いつつ、シティサイクルを止められない理由の一つには、サドルが高く、足が地に着かないことがあるかと思います。
収蔵資料の中に、自転車が写っている写真が1枚あります。創業10周年を記念した絵はがきで、当時の本社前に人力車4台と自転車1台が停めてあるのが見えます。サドルが高いということは置いておいて(昔の自転車はサドルが高かったようです)、創業10周年ということは1910年、その頃の移動には人力車が主力であったことがわかります。
少し前のことですが、支店から歴史の勉強会をするとのことで、問い合わせがありました。今も調査員は現地現認、調査には実際に足を運ぶことが原則で、交通手段は車、電車などを使いますが、創業当時は主に足に何を使っていたのかという質問です。当時の調査員は一体どのようにして調査に赴いていたのか、もちろん近ければ徒歩で、当時すでにバスや電車があったのでそれを利用して…
創業者が書いた自伝『後藤武夫伝』に、創業当時を振り返る記述があります。「電車もない時代の私には、車に乗るべき金もなかった。終日テク(徒歩)であちこちと駆けまわったが、さしたる収穫もなかった。加盟会員の募集もなかなか骨であった。(中略)会員は次から次へと増えてきた。今までテクっていた私も、俥(人力車)というものを雇い得るようになった」
創業当時は徒歩中心であったのが、人力車を使えるようになったことへの喜びが伝わってきます。絵はがきの人力車4台と自転車1台は、事業が軌道に乗ってきたことの証です。歩くことを「テクる」という言い回しがかわいく聞こえますが、てくてくと歩き、地道に事業を拡大していった創業者の苦労が偲ばれる部分です。今も昔も情報はスピードが命、最新の乗り物を取り入れて、いち早く情報を入手していたのでしょう。
たまには自転車に乗って、いずれはクロスバイクデビューを果たしたいと思います。