最近、研修や歴史セミナーなど社内向けに話す機会が増えつつあります。
社員向けに説明するために改めて歴史を見直してみると、当たり前に使っていた言葉でも、紐解いてみれば新たな発見も多く、反省することしきりです。
創業者が唱え、目指した「実業道徳の興隆」ということばの意味について、実業は利益を求め、道徳は公益を追求すること、その両者を興隆させることは、渋沢栄一が唱えた「道徳経済合一説」に非常に近い考えであったことに、今回改めて気づかされました。
渋沢が近代化する日本において信用調査会社の必要性を強く感じ、自身で東京興信所を起ち上げたことは、信用調査業界にとって大きな出来事です。渋沢が信用調査業の意義について語った文章に「公平の眼をもってよく調べてもらうということは得意先とてもむしろよいと思わねばならぬ」というセリフがあります。「公平の眼」で企業の信用を調査することは調査員の責務であることが明言されています。
史料館では、来週から関東大震災100年にあたり、テーマ展示「関東大震災と帝国興信所」を開催します。震災後、帝国興信所は被災企業の信用調査に際して、失った財産ばかりに眼を向けるのではなく、経営者の長年の営業や経営ぶりを考慮して信用程度を決定することを、日報紙上において広く宣言しています。信用調査を通して被災企業支援を行う。これも一つの「公平の眼」です。
大切なことは、時代が変わっても、どんな状況においても変わらず。展示解説に熱心に聞き入っていた新入社員には、この「公平の眼」という言葉だけでも心のどこかに残しておいてほしいです。