博物館とはどのような施設でしょうか。
文化庁によると「博物館は,資料収集・保存,調査研究,展示,教育普及といった活動を一体的に行う施設であり,実物資料を通じて人々の学習活動を支援する施設としても,重要な役割を果たしています。(文化庁ホームページ 1.博物館の概要より抜粋)」とされています。
ここにある「教育普及」の言葉のとおり、博物館と聞くと「一般に開けた場所」「公共の施設」というイメージがあるのではないでしょうか。しかし、企業博物館のなかには「一般に開けた場所」とは対照的な、一般非公開の施設があります。
以前、~企業博物館その(5)~において、「企業博物館とはなにか」という問いについてお話ししましたが、企業博物館の運営目的は多岐にわたるため分類が難しいと思われます。では、その中で一般非公開の施設にはどのような目的があるのでしょうか。
当館の企業博物館リストによると、原則一般非公開とされているのは37館で、リスト全体の約0.05%。少数派ではありますが、このうちの半数近くは、社員や関係者に向けた研修施設を主な運営目的としています。(ホームページや資料等で明記しているもののみ)
例として、(株)セブン&アイ・ホールディングスの伊藤研修センターには、食品の調理や加工技術のトレーニングが行える技能室の他に史料室があり、イトーヨーカ堂の創業期から未来を考察する企画展など、5つの展示ゾーンで構成され、研修施設内において重要な理念伝承の場としています。
また、日本航空(株)や、全日本空輸(株)、東日本旅客鉄道(株)、東京地下鉄(株)などの公共交通機関が運営する施設では、過去におきた事故や故障、災害において被害にあった実際の車両や部品、映像、新聞記事を展示し、社員が当時の悲惨さや社会的責任などを実感、未来の安全について考える場として活用しているとのこと。
このように、企業博物館には「一般に開けた場所」とは異なる施設がありますが、社員に対する「教育普及」に尽力し、文化庁の示す博物館の役割を十分に果たしていると考えられます。こうした変則的な運営目的があるのも、企業博物館の魅力のひとつでしょうか。
(人数指定や期間限定など制限はありますが、予約により見学が可能な施設もあります。詳細は各企業ホームページにてご確認ください。)