学芸員室の雑記帳

亀の甲

日々続く史料整理は、時折難航しながらも、博物館で働く者の本分であると感じています。

先日作業に取り掛かったのは、本社から送られてきたDVDの映像確認。2009年~2023年までの、当社(帝国データバンク)がデータ提供・取材で協力したテレビ番組が録画されています。

当社は創業120年を超える老舗企業ですが、その博物館となると、取り扱っている史料は明治から、直近でも昭和までのものが大半で、「2009年なんて、たったの14年前」「ついこの間」という感覚で見始めました。しかし時の流れを侮るなかれ。ブラウン管テレビの名残で左右に黒帯のついたCM、普及し始めたスマホと盛況なスマホ教室、出演者の華やかな服装やメイクなど、頭のなかで短縮されていた平成時代がよみがえり、14年という月日が如何に長いかを実感しました。

そんなノスタルジーに浸るのを抑えつつ、映像確認を進めます。

皆さんはニュース番組などで、帝国データバンクの名前を見たことがあるでしょうか。おもに企業や倒産に関する解説で、当社のデータが活用されています。ニュース、新聞、教科書にも載っていますので、良ければ「帝国データバンク調べ」の文字を探してみてくださいね。映像のなかでも、金融円滑化法施行時や、震災、コロナなどの揺れ動く情勢下で、企業の動向を数値で示していました。

また、現在も活躍する社員たちが取材対応やスタジオゲストとして登場します。配属先や肩書は違えど、今と変わらず真摯に対応している様子が伝わってきます。歴史資料に携わっていると、細かな年月の感覚が鈍りがちになりますが、こうした社員たちの1日、1年、10年…という積み重ねが、今の会社を形成しているのだと再認識しました。

亀の甲より年の功という言葉があります。いつか自分も言われる側になりたいものです。ひとまずは、亀にでも。