学芸員室の雑記帳

虫プロの倒産記事

先日、六本木で開催中のブラック・ジャック展に行ってきました。小さい頃に繰り返し読んだシーンの原画が豊富に展示され、1話ごとに読みふけってしまったため、とても1回では見切れませんでした。

展示では、虫プロ倒産時の新聞記事がパネルになっており、釣られて寄ってみれば記事中に「帝国興信所」の見慣れた文字。帝国興信所の調査を引用した倒産記事でした。旧虫プロは、1973年11月5日に3億5千万円の負債を抱えて倒産しています。収蔵庫で、当時の『日刊帝興情報』(現『帝国ニュース』)を見てみると、翌日の11月6日に速報、翌々日に詳細が掲載されていました。

詳報では、「鉄腕アトムブームは下火になり、他社が製作した怪獣、根性ものに押されて虫プロ作品はいずれもパッとせず、人員の急増による経費増などで多額の赤字を抱え、経営不振に陥った。」として、再建は困難との見方が強いと述べています。主業をアニメ製作とせずに、テレビ漫画製作としているところに時代の流れを感じます。

ブラック・ジャック展で、帝国興信所の文字に出会うとは思ってもみませんでしたが、短編には、友人の命を助けるために会社をつぶしてしまう社長の話など、TDB勤務を経た今だからこそ読み直したくなるエピソードも多く、改めて手塚治虫が天才であることを実感しました。

明日から「火の鳥」望郷編のアニメーション映画が公開されるようで、こちらも大変楽しみです。