学芸員室の雑記帳

十館十色~企業博物館その(17)~世界のカバン博物館(後編)

前回に引き続き、「世界のカバン博物館」についてレポートします。

8階の「新川柳作記念館」では、入口で創業者の物語、経営理念など他2、3分程度の映像が観られます。展示室内の壁面パネルでは創業者の生い立ち、カバンとの出会い、創業、黎明期、飛躍期、発展期、熟成、多様、未来と、社史が続き、創業者の愛用品、大切にしてきた名言も展示されていました。

創業者や経営理念に関する映像が見られることや社史の壁面パネル、過去の自社製品、創業者の名言(経営信条)などの展示は、当館にも共通するところです。「世間に広く会社と事業内容を知ってもらうこと」を目的とする企業博物館の特徴かと思います。

主業であるカバンについての展示と、創業者や社史の展示がフロアで分かれており、創業者についての展示の割合が高いように感じました。当館では信用調査の歴史と社史が時系列で同じパネルに紹介されており、社史の割合が高めです。

これは設立経緯の違いによるものではないかと思いました。

「世界のカバン博物館」はカバンコレクションの展示を起点とし、「新川柳作記念館」は創業者の生涯にフォーカスした展示内容で、生誕100周年の2015年に新たにオープンしたため、別館として分かれています。当館は創業100周年の記念事業として作成した社史を基に開館しているので、社史を中心とした展示構成になっています。

目的が同じでも、設立経緯が異なれば展示の構成も変わることがわかりました。企業博物館の一員として見学すると新しい発見があり、有意義な見学となりました。